Cp.14 - Spikes can be generated in dendrites

  • いくつかの条件下では,樹状突起もスパイクを発生する.
  • その存在は,CA1神経細胞尖頭樹状突起で細胞体/軸索集合スパイクに先行する発火現象としてfield potential recordingによって初めて示された.
  • 近年の皮質および海馬スライス,in vivo実験から,樹状突起の膜電位依存性Na+およびCa2+チャネルが再生的なスパイクを発生させることを報告している.

 ■ Fig 14.5 樹状突起スパイクと軸索スパイクとの関係

    • A: 皮質V層錐体細胞からsomaとdendriteでsimultaneous patch-clamp recording.皮質II/III層を電気刺激した.1番上; soma/dendriteともに閾値下のEPSP.上から2番目; somaでの発火無しにdendriteが発火.下から2番目; somaでの発火とは無関係に樹状突起スパイクが発生.1番下; somaでの発火に先行して発生する樹状突起スパイク.
    • B: 皮質V層錐体細胞からsoma,dendrite,axonでsimultaneous triple patch-clamp recording.皮質II/III層を電気刺激した.上;somaでスパイクが発生する強度で刺激.下;さらに強い強度で刺激すると,soma/axonでのスパイク発生に先行して樹状突起が発火する.
  • 短いcurrent injection,caged-glutamate刺激→TTXで阻害される数msの幅の狭いスパイクが起きる(Na+スパイク).一方,長いcurrent injection,caged-glutamate刺激→TTXに阻害されず,Ca2+チャネル阻害薬で消失する,幅の広いスパイクが起きる(Ca2+スパイク).
  • シナプス入力による樹状突起スパイクの発生については,薬理学的な研究が難しく進んでいない.しかし入力強度,記録位置によってその幅が変化することなどから,Na+,Ca2+チャネルが(複合的に)寄与していると考えられている.
  • 皮質V層錐体細胞では,樹状突起の細胞体に近い部分ではNa+チャネルによる樹状突起スパイクがほとんどで,遠い部分では電位依存性Ca2+チャネルによるものが多くなる(Schiller et at., 1997など).しかし前頭前野ニューロンではこの関係が反転する(Seamans et al., 1997).さらに皮質V層錐体細胞では尖頭樹状突起シナプス入力すると,NMDAチャネルが主な成分である樹状突起スパイクが観察されるらしい(Schiller et al., 2000).ただしこのNMDA mediatedなスパイクはでん依存性チャネルによるスパイクと異なり,グルタミン酸の結合が必要であるためシナプス入力位置を越えて広がることはない.
  • 錐体細胞では樹状突起Na+/Ca2+スパイクはsomaおよびaxonまで完全には伝わらない.けれどもNa+スパイクに比べてCa2+スパイクの方が広がる.
  • 軸索の閾値が他より低いことは数々の証拠が示唆するが,いくつかの状況下では高い閾値を持つ樹状突起がまず始めに発火する.それは樹状突起が軸索よりは弱いが興奮性を持っているからで,樹状突起スパイクは相対的に大きく速い局所的なシナプス入力があった場合にのみ発生する.それはあまり細胞体まで伝わらず,活動電位の発生に関わらないことが多いことから,能動的シナプス統合の一形態であり,シナプス統合の最終地点は(やはり)軸索であると考えられる.